知能

音楽で頭はよくなるのでしょうか?

Lisa Szymanski
By Lisa Szymanski, 理学士(心理学・組織心理学)
Published 2024/06/14 · Updated 2024/06/24
「モーツァルト効果」と題された、音符を背景にしたモーツァルトの肖像画

イラスト:© Cognitivus

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音楽を聴くと気分が明るくなり、心が安らぎます。私もお気に入りの曲に何時間も浸ることがありますが、いつも心地よい気分になります。 

オーケストラの響きでも、リズム・アンド・ブルースのビートでも、心地よい音楽は、わくわくする気持ちやくつろいだ気分を生み出してくれます。では、音楽で頭もよくなるのでしょうか?この記事では、音楽とIQの興味深いつながりをひもといていきます。 

1. 音楽で本当にIQは上がるのでしょうか?

音楽が心を動かすことはよく知られています。では、頭の働きもよくしてくれるのでしょうか? 

ピアノを弾いたり、モーツァルトの交響曲に聴き入ったりすることで、学び方や情報の処理の仕方は変わるのでしょうか? 

研究によると、変わる可能性はあります。ただし、想像しているような変化ではないかもしれません。音楽を聴くだけで知能が高くなるわけではありませんが、幼い頃から楽器を演奏したり、勉強中にBGMを流したりすると、集中力や記憶力が高まる可能性があります。 

興味深い研究では、音楽の刺激に脳の特定の領域が反応し、男女で異なる心理生理学的反応 が生じることが示されています。音楽とIQの関係を知るために、研究でわかっていることを見ていきましょう。音楽活動に脳がどう反応するのかも探っていきます。 

音楽は脳の発達に影響するのでしょうか?

音楽のトレーニングは、さまざまな形で脳に変化をもたらします。少し意外に感じるかもしれません。たとえば、幼い頃に楽器の演奏を習うことは、聴覚情報の処理能力の向上と関連しています。これは、脳がさまざまな音を処理し、理解しやすくなるということです。ハーバード・メディカル・スクールで神経学の講師を務めるAndrew E. Budson, MDは、聴覚情報の処理能力が言語能力を高める可能性について説明しています。具体的には、どういうことでしょうか?音楽に触れると、記憶や注意、時空間認知能力を担う脳の領域が刺激されます。時空間認知能力は、問題を解決したり計画を立てたりするときに使う力です。 

うれしいことに、こうした認知能力は、音楽を聴くことでも演奏することでも磨けます。研究によると、リラックスできるBGMを聴くと、記憶に関わる脳の領域が活性化し、さらに分析思考の力も高まることが示されています。 

音楽に取り組むことは、身の回りの世界を理解するための認知能力を育む助けになります。ギターのような楽器を演奏する場面を考えてみましょう。メロディーを奏でるには、聴覚情報を処理して音を聴き分けるだけでなく、視覚的な記憶を使いながら弦にしっかり注意を向ける必要もあります。同時に、曲を作るために音のパターンやリズムもつかんでいきます。こうした一つひとつの動作で脳の異なる領域が働き、滑らかな演奏につながります。 

音楽と知能の関係を考えると、記憶力や問題解決能力の向上が、特定の音楽活動に結びついているのは自然なことです。それが知能全体やIQの高さを示すわけではありませんが、さまざまな知的能力を磨くうえで役立ちます。つまり、音階の練習やギターをかき鳴らすことで特定の能力が伸びる可能性はあっても、それは認知能力というパズルの一片にすぎないのです。 

モーツァルト効果の真相

「モーツァルト効果」を聞いたことはありますか?これは、モーツァルトの音楽を聴くほどIQテストの成績がよくなるという説です。この現象は、心理学者のFrances Rauscherが1993年に発見しました。Natureに掲載された初期の研究では、モーツァルトを聴くと、一部の空間推論テストで成績がよくなる可能性が示されました。 

Portrait of Mozart with musical notes in the background titled 'The Mozart Effect'
モーツァルト効果で空間認知能力が一時的に高まる可能性があります/画像:Wikimedia Commons、パブリックドメインの画像を使用/© Cognitivusがイラストに使用

でも、この説は本当に正しいのでしょうか?

モーツァルトの音楽を聴くと、空間認知能力を使う課題で一時的によい結果が出ることはあるようです。ただし、その効果は長く続きません。長くても、聴き終わってから15分ほどとされています。

音楽を聴くだけで認知機能や空間認識能力が高まるなら、私もうれしいです。ただ、IQへの効果が最も期待できるのは、音楽に能動的に取り組むことです。音楽活動を通じて、短期記憶や長期記憶、問題解決能力を伸ばせます。もちろん、モーツァルトの曲を聴いても心が豊かにならない、という意味ではありません。実際、ソナタを聴くとリラックスして、緊張をほぐせます。ただ、楽器を始めると、聴くだけの場合よりも認知能力の向上が期待できます。 

2. 音楽教育やトレーニングが知能に与える影響

音楽教育やトレーニングは、楽譜を読んだり、楽器の演奏を覚えたりするだけのものではありません。知識を広げ、学業の成果を高めることにもつながります。学習や練習を通して音楽の世界に深く触れることは、知能に大きな影響を与える可能性があります。そこで、音楽が脳に及ぼす影響を見ていきましょう。 

音楽が脳の認知機能に与える影響

音楽が脳の認知機能にどのような影響を与えるのかを理解するには、科学的な視点が必要です。スタンフォード大学の研究者たちは、脳の画像を使い、音楽が集中力や記憶、予測に関わる特定の領域を活性化させることを示しました。驚くことに、脳の活動が最も活発になったのは、交響曲と交響曲の間にある無音の時間でした。脳はこうした間を利用して、情報を処理し、整理していると考えられます。この意味で、音楽は進化の面でも役割を果たしています。次に入ってくる情報や、その後に起こる出来事を予測し、注意を向ける助けになるからです。 

こう考えるとわかりやすいかもしれません。音楽には、次の展開を予測できる部分があります。そうした展開を手がかりに、脳が物事をどう吟味し、批判的に考えるのかを理解できます。特に、感覚を通じて情報を受け取るときの働きが見えてきます。つまり、音楽に関わることで、予想外の複雑な状況に対応する力を身につけられるのです。これは、学習にも日常生活にも生かせる、とても大切なスキルです。 

音楽のレッスンとIQのつながり

ピアノやドラム、バイオリンなどを習うことは、記憶力や集中力を育てます。では、音楽のレッスンは、IQや新しいことを学ぶ力と具体的にどう関わるのでしょうか。アメリカ心理学会が紹介した研究では、定期的に音楽のレッスンを受けた子どもや青少年に、IQと学業成績全般の向上が見られました。音楽プログラムへの参加期間が長いほど、認知面での効果も大きくなっていました。研究者たちは、参加した子どもたちのIQスコアに上昇傾向があることに気づきました。中でも、何年も練習を続けた子どもたちは、IQが大きく向上していました。 

こうした結果を見ると、知能と音楽の学習には、わずかな関連にとどまらないつながりがあると感じられるのではないでしょうか。育った環境や経済状況にかかわらず、音楽教育と学業成績の向上には一貫した関連が見られます。音楽を学ぶことで認知スキルが磨かれるのかもしれませんし、レッスンそのものの難しさが知的能力を引き出すのかもしれません。いずれにしても、音楽の訓練は子どもの知的な発達を形づくる要因の一つだと、研究者たちは考えています。 

Journal of Educational Psychologyに2020年に掲載された研究は、子どもの音楽学習と知能のつながりを知る手がかりになりました。この研究では、音楽教育を受けて楽器を演奏していた高校生は、音楽の授業に参加していない同級生より、理科、数学、英語の成績が高いことが示されました。ほかの要因を考慮しても、結果は変わりませんでした。この研究からも、楽器の演奏は、学習に役立つさまざまなスキルを育むと考えられます。動作を連動させる力や正確さだけでなく、仲間と協力する力や、相手の話にしっかり耳を傾ける力といった対人スキルも含まれます。 

簡単に言えば、音楽のレッスンや学校での音楽学習を早く始めるほど、音楽性や知的能力全般、成績へのよい影響が大きくなるということです。音楽は、単なる娯楽にとどまりません。脳の神経回路を強化し、知的な働きにも確かな影響を与えます。子どもでは、音楽に関わることが神経可塑性を促します。神経可塑性とは、新しいことを学ぶのに応じて、脳が変化する力です。モーツァルトを聴くだけで一晩にして天才になれるわけではありません。それでも、自ら取り組む音楽の練習を続けることで、粘り強く考える力を鍛えられます。 

楽器を習うことは、子どもや青少年のIQを大きく高め、学業成績を向上させる可能性があります。継続的な音楽のレッスンが、認知スキルや記憶力、集中力を育てるためです。

3.音楽家はIQが高いのでしょうか?

楽器の演奏や音楽の学習が認知機能を高めるのなら、音楽家はとても知的なはずだと思いませんか?ただ、この話は、思っているほど単純ではないかもしれません。子どもの頃の音楽の訓練とIQの関係を見ながら、音楽家は一般の人より知的能力が高いのかを探ってみましょう。 

子どもの頃の音楽の訓練とIQ

音楽家は知的能力が高いのかを考えるには、音楽の訓練が知能にどう影響するかを見る必要があります。その出発点は子ども時代です。ドイツのウルム大学が行った研究では、楽器を演奏する幼い男の子たちを調べました。その結果、楽器を演奏しない男の子たちよりも、言葉を使わずに考える非言語性知能が高く、つづりを書く力も優れていることがわかりました。 

興味深いのは、音楽の訓練によって男の子たちの音を聞き分ける力が高まり、それが言語能力の向上につながったことです。特に、ドイツ語のように文字と発音の対応がわかりやすい言語で、その効果が見られました。こうした結果から、認知機能の発達を助けるのは、単に音楽に興味を持つことではなく、実際に練習することだと考えられます。 

こうした研究は、音楽活動の種類によって、知的な発達への影響も異なることを示しています。歌うことや幼い頃から音楽に触れることは、気分によい影響をもたらします。一方、楽器を習う子どもは、記憶や言語などの認知スキルに優れていることが、研究で示されています。こうしたスキルは、日々のコミュニケーションを大きく支えます。 

IQを高めるには、どの楽器がよいのでしょうか?

楽器の演奏が認知機能の発達に影響するとわかると、次に気になるのは、効果を得るには特定の楽器を演奏する必要があるのか、という点です。これまでの研究では、特定の種類の楽器ではなく、演奏を学ぶときに使う技術や方法に注目しています。 

ピアノやバイオリンのように、楽譜を読みながら手を動かし、それらを複雑に連動させる練習が、脳の発達に影響するようです。結局のところ、大切なのは楽器の種類そのものではありません。練習にどれだけの時間をかけ、どれほど複雑なことに取り組むかが重要なのです。 

Two children practicing piano on a keyboard and violin while reading the music scores
音楽、特に楽しい音楽は創造性を高めてくれます/ 写真:PexelsのBoris Pavlikovsky、MART PRODUCTION


楽器の演奏を学ぶことに加えて、音楽を長く続けることにも意味があります。研究によると、プロかどうかにかかわらず、演奏や練習を続けてきた期間が長い人ほど、記憶力や集中力、複数の作業を同時にこなす力が優れているそうです。音楽と長く関わることで脳の柔軟さが保たれ、特定の認知能力が高まると考えられます。 

楽器の演奏がすばらしいのは、脳のさまざまな部分を同時に使うところです!楽譜を読んだり、手を動かしたりするだけではありません。自分が奏でる音を聴きながら、演奏の仕方を調整し、ほかの演奏者と息を合わせます。こうした動作を同時に行うことで、問題解決や予測など、さまざまな思考が刺激されます。  

ただし、趣味として音楽に取り組むことで、学業でいう「頭のよさ」が高まるという見方に、すべての科学者が同意しているわけではありません。つまり、音楽を続ければ必ずIQテストの点数が上がるわけではないのです。それでも、音楽は脳の発達を支え、感情知能にも大きな影響を与えるといえます。 

4.脳にはクラシック音楽のほうがよいのでしょうか?

これまでにわかっていることから、音楽は単なるBGMではないといえます。気分をよくしてくれるだけでなく、脳の働きにも確かな影響を与えます。 

思考力を高める音楽として、特によく知られているジャンルの一つがクラシックです。ベートーヴェンのピアノソナタからヴィヴァルディの管弦楽曲まで、心を引きつけるこれらの作品は、脳の特定の領域を活性化させることで知られています。記憶や注意、作業の切り替えに関わる領域などです。クラシック音楽を理解し、そのよさを味わう力が、高いIQに関連する認知能力を磨く可能性を示す研究もあります。 

でも、ほかのジャンルの音楽では知的な力を高められない、ということではないので安心してください。好きな音楽を楽しむことが、心の健康や働きを支えると示した研究があります。お気に入りのロックのビートでも、ジャズでもかまいません。聴いて幸せな気持ちになる曲は、創造性や問題解決力、斬新な発想を引き出してくれます。 

クラシック音楽には、知的な面でさまざまなよさがあります。ただ、ジャンル以上に大切なのは、音楽にどれだけ心が動くかということかもしれません。クラシックでもポップスでも、心に響く音楽なら、脳にもよい働きかけをしているはずです。 

5.音楽は感情知能や創造性を高めるのでしょうか?

好きな音楽を聴くと、気分が一瞬で変わり、日々の困難にも向き合いやすくなることがあります。私自身、不安なときに心の落ち着きを取り戻すなど、気持ちが揺れ動くときにはいつも音楽が寄り添ってくれました。では、音楽はなぜ感情にこれほど大きな影響を与えるのでしょうか? 

音楽に触れることで、自分の感情に気づき、調整する力が育ち、気分を安定させる方法を学べます。心に響く音楽の歌詞やメロディーに共感することは、共感力を高めることにもつながります。 

音楽は感情を揺さぶるだけでなく、体にも反応を引き起こします。その反応は自律神経系にかかるストレスを和らげる可能性があり、感情の調整をさらに助けてくれます。 

音楽は感情にこれほど多くの強い影響を与えます。感情知能を高めてくれるのも、自然なことです。そして感情知能は、IQよりも重要だと考えられるようになってきています。

では、創造性にはどのような影響があるのでしょうか?創造性やアイデアを生み出す力には、感情を理解する力や認知能力が関わっています。ぴったりの音楽を聴くと、気分が上向き、枠にとらわれない発想がしやすくなります。音楽で感覚を刺激するほど、創造性やアイデアの発想に関わる脳内のネットワークが強まるためです。 

楽しい音楽を聴く場面を例に考えてみましょう。気分が明るくなる音楽は、芸術でも科学でも、独自の発想を後押ししてくれます。ただし、順を追って考える思考や、一つの答えに絞り込む収束的思考では、同じ効果は得られない可能性があります。つまり、音楽は創造性を刺激しますが、問題や課題に対して一つの正解を見つける助けになるとは限りません。分析思考や収束的思考が求められる場面では、創造性ではなく、全般的な知能を頼りにすることになります。 

Two halves of a brain with science icons and artistic motifs
研究では、音楽教育と子どもの認知能力の向上に関連が見られます/ イラスト:© Cognitivus

音楽と知能の関係について、ここまででわかること 

音楽と知能の関係を知ることで、お気に入りの曲もこれまでとは違って感じられたらうれしいです。音楽はどのような形であっても、知的な面でも感情の面でも、私たちを豊かにしてくれます。新しい楽器を習うといった活動は、情報を処理したり、問題を解決したりする力を育て、高めてくれるのです。 

音楽は感情を豊かにし、創造性を広げてくれます。それは子どもも大人も同じです。音楽を聴いても、テストで測るIQの数値が直接上がるわけではないかもしれません。それでも、気づかないうちに思考や心に影響を与えています。音楽を楽しみながら、洞察力や創造性、知性を育んでいきたいですね。 

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