知能

感情知能の高いリーダーとは?

Zymarl A. Fernandez
By Zymarl A. Fernandez, 修士(心理学)、登録心理測定士
Published 2024/07/01 · Updated 2024/09/29
感情知能の高いチームリーダー

イラスト:© Cognitivus

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この7年間、私はクリニック、教室、企業など、さまざまな現場で仕事をしてきました。その経験を通じて、優れたリーダーの条件について、心理学の視点から独自の理解を深めることができました。 

その歩みを通じて強く実感したのが、リーダーにとっての感情知能の大切さです。ただ指示を出すだけではなく、チームを本当に理解し、深い信頼関係を築こうとするリーダーには欠かせません。感情知能は、リーダー個人だけでなく、従業員、チーム、そして組織全体にとっても重要です。

この記事では、感情知能がリーダーシップにどう関わるのか、そしてなぜそれほど大切なのかを見ていきます。

感情知能の高いリーダーの特徴

感情知能(EQ)は、優れたリーダーシップを支える重要な要素です。チームとのつながりを深め、理解や共感、協力を育む力になります。

感情知能とは、自分の感情に気づいて適切に調整し、相手の感情を理解する力です。思いやりを持ち、状況に合った関わり方で人間関係を築く力も含まれます。

Daniel Golemanなどの専門家は、リーダーとして成功するうえで、EQは従来の知的能力と同じくらい重要であると強調しています。

感情知能を支える4つの要素

Daniel Golemanによると、感情知能は4つの柱にまとめられます。

Core components of emotional intelligence: self-awareness, self-regulation, social awareness, relationship management
感情知能を構成する4つの要素:自己認識、自己調整、社会的認識、関係管理/ イラスト:© Cognitivus
  • 自己認識:感情知能そのものと混同されることもありますが、自己認識とは、自分の感情や強み、弱みを理解することです。自己認識ができているリーダーは、自分の気持ちを振り返り、それが判断や人との関わりにどう影響するかを考えます。たとえば、自分のストレスに気づけば、チームに影響が及ぶ前に対処できます。
     
  • 自己調整:自分の感情や反応を適切にコントロールすることです。自己調整を実践するリーダーは、プレッシャーのかかる場面でも落ち着きを保ち、よく考えて判断します。こうした一貫した姿勢が、チーム内の信頼と安心感を育みます。
     
  • 社会的認識:社会的認識に優れたリーダーは、周囲の人の感情や気分を察知できます。こうした共感する力によって、人とのつながりが深まり、互いに支え合い、協力できる環境が育まれます。たとえば、メンバーが困っていることに気づけば、問題が大きくなる前に手を差し伸べられます。
     
  • 関係管理:健全な人間関係を築き、維持することです。この力に優れたリーダーは、感情への理解を生かして意欲を引き出し、対立を解消し、まとまりのあるチームをつくります。適切な関係管理は、コミュニケーションやチームワークの向上につながります。

リーダーシップに感情知能が大切な理由

感情知能の高いリーダーは、チームを一つにまとめ、組織が困難を乗り越える支えになります。感情知能は、磨き続けることのできるスキルです。リーダー自身やチームのメンバーの毎日、さらには職場全体の雰囲気にも、確かな変化をもたらします。

研究でも、感情知能がリーダーシップの発揮に大きく影響することが示されています。Korn Ferryの調査によると、感情知能の高いリーダーは、従業員の解雇やリモートワークへの移行といった課題に、より適切に対応できます。厳しい状況でも、欠かすことのできない信頼と士気を保てるのです。 

Deloitteの研究でも、感情知能の高いリーダーは職場の雰囲気を良くし、成果につなげることが強調されています。感情知能に優れたリーダーは、自分の役割をしっかり果たすだけでなく、互いに協力し、尊重し合える環境を育てます。

同様に、ハーバード・ビジネス・スクールの研究でも、感情知能に優れたリーダーが、困難にしなやかに対応し、高い成果を上げるチームをつくることが示されています。

感情知能がリーダーシップにもたらすメリット 

まずまずのリーダーと、本当に優れたリーダー。その違いを生むのが感情知能(EI)です。リーダーとして自分の感情に気づき、周りの人の感情にも目を向けることは、さまざまな形でリーダーシップを高めます。

1.チームとのつながりが深まる

EQの高いリーダーは、チームのメンバーと一人の人間として向き合います。誰もが「自分を見てくれている、大切にされている」と感じられる、受け入れ合う雰囲気をつくります。たとえば、メンバーの頑張りを認めることで、士気や意欲が高まります。リーダーが日々の努力に感謝を伝えると、メンバーはチームの一員として認められていると感じられます。

2.プレッシャーの中でも冷静でいられる

感情知能の高いリーダーは、厳しい状況でも落ち着きを保ち、チームが集中力と前向きな姿勢を維持できるよう支えます。忙しい職場では、この冷静さが、混乱を招くか、生産的に働けるかの分かれ目になることもあります。たとえば、プロジェクトが危機に直面したときも、落ち着いたリーダーなら状況を見極められます。チームが慌てずに、効果的な解決策を見つけられるよう導きます。

3.信頼と透明性が育まれる 

感情知能の高いリーダーは、率直で誠実です。その姿勢が信頼につながります。メンバーが不安やアイデアを伝えやすいように働きかけ、情報を共有し、協力し合える環境をつくります。課題や意思決定について包み隠さず伝えることは、信頼を築き、率直なコミュニケーションを育みます。それが、組織の問題解決力を高め、新しい発想を生むことにもつながります。

4.共感を通じて、前向きな職場をつくる 

メンバーを理解し、支えるうえで、共感は欠かせません。共感を示すリーダーは、強い絆を築き、前向きな職場風土を育てます。たとえば、メンバーが私生活で抱える悩みに耳を傾け、柔軟な働き方を認めることは、その人を大切に思っているというメッセージになります。こうした共感に基づく対応は、ストレスを減らし、仕事への満足感を高めます。その結果、人材の定着や、仕事への積極的な関わりにもつながります。

EYの研究では、組織変革を成功させるうえで、感情知能(EQ)が重要な役割を果たすことが強調されています

リーダーとして感情知能を高めるには

感情知能を高めるには、継続的な取り組みが必要です。リーダーとしてより力を発揮できるようになり、自分自身の成長にもつながります。

実践のヒント

感情知能を育むために、次のようなことから始めてみましょう。

A leader motivating a team showing effective leadership
リーダーの内側から湧く意欲は、自分を動かすだけでなく、チームにも前向きに取り組む力を与えます/イラスト:© Cognitivus
  • 自己認識を高める
    自己認識を高める第一歩は、自分を振り返り、周りの人から意見をもらうことです。どんなことが感情を揺さぶり、それが行動にどう影響するのかを理解することが大切です。考えや気持ちを書き出すと、自分のパターンや改善したい点に気づきやすくなります。 
    • EQを生かす伝え方:「私は〜と感じています」と伝えると、自分の感情をより的確に言葉にできます。
    • 避けたい、EQの低さが表れる言葉:「どうでもいいです」。感情を軽く扱い、関わろうとしない姿勢が伝わります。
  • 共感を実践する
    共感とは、相手の立場から物事を見ることです。共感と感情知能は同じものだと思われがちですが、両者は異なります。感情知能は、いくつものスキルを含む、より広い概念です。共感は、そのうちの一つです。

    チームの声にしっかり耳を傾け、心身の健康や充実を気にかけることが、信頼と率直な対話につながります。たとえば、新しい仕事を任せる前に、相手が今どれくらいの仕事を抱えているかを考えることも、共感の表れです。
    • EQを生かす伝え方:「その気持ち、わかります」と、共感を示します。
    • 避けたい、EQの低さが表れる言葉:「大げさですよ」。相手の気持ちを軽く扱い、その感情を否定する言葉です。
       
  • 意欲を保つ:
    本当の意欲は、報酬だけから生まれるものではありません。情熱や、困難から立ち直る力が土台になります。仕事にやりがいを感じているリーダーの姿は、チームを励まし、厳しいときにも取り組み続ける力を与えます。「順調に進んでいますね。この調子で続けましょう」と声をかけてみましょう。
    • EQを生かす伝え方:「順調に進んでいますね。この調子で続けましょう」
    • 避けたい、EQの低さが表れる言葉:「とにかく終わらせてください」。努力を顧みないこの言葉は、チームの意欲をそいでしまうことがあります。
       
  • 対人スキルを磨く:
    円滑なコミュニケーションと対立を解決する力は、欠かせません。わかりやすく、相手を尊重してやり取りすることで、認識をそろえ、協力して気持ちよく働けるようになります。 
    • EQを生かす伝え方:「このことについて、もう少し話し合えますか?」と、率直な対話を促します。
    • 避けたい、EQの低さが表れる言葉:「好きにすればいいです」。相手の気持ちを無視したり、軽く扱ったりする表現です。

感情知能を生かす言葉やフレーズをもっと知りたい方は、こちらのガイドもご覧ください。 

感情知能を高めるトレーニングは? 

Forbesが紹介した調査によると、2024年に最も求められているスキルは感情知能です。こうした背景から、スタートアップや法執行機関、フォーチュン500に名を連ねる大企業まで、さまざまな組織が職員の感情知能を高める研修に力を入れています。こうした対人スキルへの投資は、リーダーが対立に対処し、よりよい人間関係を築き、意欲の高いチームを育てる助けになります。その積み重ねが、一体感のある、生産性の高い職場につながります。

Sources